スペインで生まれる最高級モヘア『エスカライ』

Handmade

スペインは歴史的にウールの国。ほぼ独占的に作っていたウールで、カスティーリャ王国は特に潤っていました。日本はというと編み物はあまりなかったようで、17世紀スペイン・ポルトガル経由で伝わった編み物が『靴下』だったようです。『靴下』や『タイツ』は『メディア』とか『メイヤス』と南蛮人が言っていた言葉がそのまま外来語として日本に残り、『メリヤス』という言葉で残っています。『ボタン』なども含め、身の回りのモノの名前がポルトガル・スペインから伝わっていることは、実に興味深いものです。今日はそんな興味深い編み物の話をお伝えします。

こちらがエスカライというラ・リオハにある美しい町。ここで今世界一優れたモヘアが作られています。元々、王立ウール工場があるくらいウール製造の盛んな町でしたが、現在はこのモヘア工場ヴァルガニョンしか残っていません。ウールの製造は、スペインからイギリス、イギリスからニュージーランドなどへ広がり、スペインから中心はアングロサクソン系の国に移ってしまいました。

そんな次々と伝統産業が姿を消す中、ヴァルガニョンファミリーはスペイン中を周り、伝統的な紡績工場を全て研究調査したそうです。最終的にモヘアの優れた製造方法を見出し、今に至っています。世界のトップブランドほぼ全てが、モヘア製品に関してはすべてここで製造していると言っても過言でないと思います。はじめて訪れた時は、エルメスの素晴らしい毛布を織っている最中でした。

工場はこんな小さいな石造りの建物の向こうにあります、町のお爺さんたちが遊びに来ていました。

オフィスの入口には、古い織り機も陳列されていて、どんどんエスカライワールドに引き込まれていくようになっています。

この工場の特徴は、原材料となる山羊のモヘアが、とても冷たい上質の水を使って加工されていくところにあります。最高に綺麗な水源がなかったら出来ないことで、この水加工がモヘアに他の真似できない光沢を与えているそうです。

スタッフ、黙々と仕事をしているところが職人だなと感じさせます。おしゃべりなのがスペイン人ですが、こういうところの職人さんはおとなしい人も多いです。

仕上がりのモヘアは、こんな風にあちらこちらに陳列されています。どこを見ても目移りしてしまいますが、特に有名なのは毛布とマフラーで、可愛いショールなども作っています。

10年くらい前から日本で紹介していますが、数年前からマ・レルラというニットブランドともコラボを開始しました。マ・レルラはリバティプリントの取扱いでも有名で、オーダーメイドのお洋服はたくさんのファンを集めています。リバティプリントの取扱いでは、日本で三本の指に入る専門店。マ・レルラの阿倍真理さんの手で、リバティプリントはあらゆるモノや服に変身してゆきます。

阿倍真理さんの手で生まれ変わったエスカライのモヘア。

そして、新しくスペインモヘアとリバティプリントのコラボも始まり、最近ワクワクなのです。私も早速なのですが、リバーシブルのコートを作っていただきました。内側のリバティプリントの方は、まだ使用していないのですが、どこかでパーティーに呼ばれたらと思って待っているところです。コートは寒い日にもう何度も使わせてもらいました。

これはピレネーでの写真。元々毛布用に作られているモノなので、すごい保温力。コートとマフラーのダブルコンビで使っています。

背後からもとても綺麗なラインで仕上がっています。
リバティプリント側を表にして着用するのが楽しみです。
こんな嬉しくなるプロジェクトはあまりないのですが、今後もスペインにある色々な伝統素材を、歴史や伝統を重んじてくれるデザイナーやメーカーさんとのコラボで紹介してゆきたいと考えています。エスカライとマ・レルラのコラボは、まだまだ始まったばかり、次の秋冬プランも着々と進めています。

スペインの美しいものが、日本でより実用的なお洒落なモノへと変身していく事ほど、私にとってうれしいことはありません。

毎年、エスカライのカラフルなマフラーを買い足して下さる皆様にも、この場で御礼をお伝えしたいと思います。どうぞ皆様、寒さに負けずにお元気で真冬をお過ごしください。

 

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