コロナウィルスのために誰もが移動制限を強いられて過ごす年ですが、おかげで時間のスピードまでが変わったような感じです。夏の最後、ブドウの収穫真っ只中のポルトガル世界遺産ドウロ渓谷の様子を今日はご紹介します。
ドウロという川の名前は黄金、ゴールドを意味しており、古代この川から多くのゴールドが採集されたことが分かります。今はワインが正に黄金ですが、川はスペインに始まり最終的にポルトガルを経由しポートの町で大西洋に辿り着きます。イベリア半島で最も美しい川だと思っています。
今回は取引先CARMのブドウの収穫を見るだけでなく、よりこの地域の事を知るために渓谷の奥に入ってみました。毎年何度も訪問する地域なのですが、とにかく道が古く狭く悪いので運転するのもリスキーです。ラリーを体験している感じです。おまけに収穫のシーズンはあらゆるトラクターが行き来するので、より危険度が高いのですが、自然の彩は秋に向かっており絶景が見られます。
ピニャンというドウロ渓谷中心部にある鉄道の駅で有名な町を25年振りに訪れました。ここにはオールドファッションのVintage Houseという由緒ある老舗ホテルがあるのですが、ここはもう体験しているので、今回は渓谷の上の方からの景色を楽しむために、お屋敷ホテルを選びました。
個人経営のホテルはインテリアがプライベートなものが多く、ここも古き良きコロニアルなムードが楽しめる良いホテルでした。朝、屋敷の前に広がる絶景の中を散策する快感は言葉になりませんが、夜ワイナリーを前にドウロワインを飲む時間は、訪れた人には一生の思い出となるひとときだと思います。風がいちミリも動かないような夜で、今年の夏ベストの時間を過ごせました。大西洋からの風が吹くこの地域、場所によっては風が地形でしのげるようになっているので、有名なヴェントセロという『風ゼロ』というワイナリーも岸辺の反対側にあり、次回はヴェントセロを体験したいと内心思っています。
コロナのおかげでステイしている人が少なく、しずかにドウロが満喫出来ました。
夜は外のテラスに食事をセットしてもらって楽しみました。
朝、すごいスロープですが、このワイナリーを川に向かって下る散歩は、ここに住んで毎日歩いてみたくなるような体験でした。これからブドウの紅葉を楽しむには最高の場所だと思います。ホテルオーナーもこれからが美しさのピークだと言っていました。
シストと呼ばれるスレートがぶどうの支柱に使われていますが、これは昔のスタイルで今大部分のワイナリーは金属製やパインツリーの支柱になってしまいました。古いスタイルのワイナリーの美しさが残っていてタイムスリップした気持ちになれました。
ドウロワインの良さは、この風景を見ていただかないと伝わらない部分があるので、出来るだけ多く写真をアップしました。人間がこの谷間をここまで切り開いていけるのだと、人間の労働力の偉大さも証明しているような谷が、世界遺産のドウロ渓谷です。私が紹介しているCARMのワイナリーは、その渓谷でも最も奥のドウロ上流という地域に存在し、もうひとつの世界遺産コア渓谷の中にあります。ポルトガルは小さい国ですが、こんな風に土地を耕し世界中にワインを輸出しています。何百年も大地を大切にして、ベストコンディションの生産物を毎年作り出す努力には脱帽です。次はもっと険しいCARMのワイナリーの今年の様子を紹介します。
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