スペインのオリーブオイルメーカー【カサスデウアルド】とのお付き合いは、もう7年以上も続いているので、毎年彼らの努力と技術的なイノベーションを見て驚かされています。元々、この会社はオリーブ業界の革新となる事が目的で創立されているので、何もかもが新しい試みが多いのですが、ここ数年も発表はしていなかったのですが、新しい取り組みに臨んでいました。
グラス越しに見ても本当に美しいとしか言えないオリーブオイルですが、こうなるまでには大変な手間と苦労があるのです。
新たのイノベーションのひとつがこちら。オリーブの種を抜く装置です。普通オリーブの実は種の中にも油分があるので、種付きのまま潰して攪拌しオイルを抽出していきます。優れたメーカーは、この砕いた種も搾油の副産物として、種の搾りカスは燃料として使います。この装置を使うと種が丸ごと果肉から取り除くことが出来るので、オリーブオイル独特の種からの苦味を緩和するのに役立ちます。次の写真のように、キレイに種が抜けるのですが、ここまで来るにも長い道のりがあったのです。オリーブの実をご存知の方は分かると思うのですが、オリーブの実は熟成度によって柔らかさが違います。グリーンの時はとても硬く、段々と熟成するにつれて柔らかくなっていきます。この装置、初代のものは黒い実の種は抜けても、グリーンの実の種抜きは不可能で、なんと写真のような装置になるまでに3台も装置を変えています。それだけでもすごい技術改良が必要で、大きな投資が必要なことは理解していただけると思います。因みに、搾油所で使われている様々な機械は、搾油所のリクエストで使用法が違うので、かなりオリジナルな機械だと思ってください。そのため優れたオイル作りには、大きな投資が不可欠なのです。
ご覧のように、品種別に種の型も大きさも違うのです。
私も数年前から種抜きの他社のオリーブオイルは試しましたが、種独特の香りと味わいがなくなってしまうと、骨格がなくなったような味のオイルになってしまうために、苦みはないのですがつまらないオイルという印象を受けていました。多くの専門家がオリーブオイルの特徴がなくなってしまうというコメントもしていました。確かに、搾油する早摘みの高級オイルから全ての種を抜いてしまったら、ボケたオイルになってしまうようにも思います。ただ、ここは世界一を目指すカサスデウアルド農園なので、色々な試みをして最高の味わいを探求しています。単純に全ての種を抜くようなことはしないはずです。
今のところ、この種抜きの技術を一番活用しているのが【レセルバデファミリア】という最高級オイルです。このオイルは、早摘みで農園内の最高の状態のオリーブを厳選してつくられます。その他のオイルよりも早く収穫され搾油される5000本の限定品です。そのオイル作りに、この種抜き工程は実際に使われており、今年も素晴らしいエメラルドグリーンのオイルが完成しています。果実を厳選し、種もある程度抜き、最終的にブレンドすることで完成するオイルですが、益々工程が複雑になっていることを理解していただけたと思います。
もうひとつのイノベーションがこちら。これも数年試験的に実験をして、今年発表になった事なのですが、オリーブの果実を極低温処理する装置です。液体窒素を利用します。この装置ワイン業界の人なら見た事あるかもしれませんが、ワイナリーで使われているモノを応用しています。
最高級オイルはアーリーハーベストと言って早摘みです。完全にグリーンの実を収穫しますが、収穫時期が早いと言う事は気温もそれなりに高い事を意味しています。10月と11月では相当気温差があります。この装置でまだ暑い時期に収穫されたオリーブの実は、圧搾される前に冷却され、攪拌時の温度が6度くらい下げる事が出来るそうです。優れたオイルを作るためには、温度コントロールが最も重要な事のひとつなのですが、これでより高品質なオイルを作ることが出来るようになりました。しかも、この装置を利用した試みは、カサスデウアルドが世界発です。ここでも革新、革新と歩み続けている様子が分かっていただけると思います。
ここから先のブレンディングなどについては、香水の調香師のようなものですから、専門家の鼻と味覚そして感性に関わってきます。来年こそ100点満点をフロスオレイというガイドブックでももらえるのではないかと思いながら、今年も見学をしてまいりました。新年度オイルについての詳細も次回お知らせしたいと思います。
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