アラゴン地方の美しい町アルケサールAlquezar

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初めてこの町を訪問した時は、1930年代頃にモノクロで撮られたスペインの美しい町並みについての写真集を見た後で、建造物にばかり目が行ってしまったようです。今回17年ぶりくらいに訪問し、新たにこの町に立地条件の素晴らしさに感動しましたが、建造物については前回も書いたように、修復の仕方にガッカリしました。それについては横に置き、今回発見したことをお伝えします。

街の後ろはすごく深い渓谷になっており、アドベンチャー好きな甥たちは、ここでラフティングなど危ない川下りをしたがっています。石灰質が多いせいなのでしょうか、水の色がコバルトブルーとエメラルド色に混ざり合い、その色合いを見るだけでも価値のある体験ができる川です。おかげでキャンピング施設も充実していました。(私個人としては、こういうキャンピング施設が伝統ある街の近くにあることは反対です。景観が見えないところにあっても観光化が進み過ぎると破壊されてしまうので。)

17年前はこの地域にオリーブの木がこんなにたくさんあるとは全く気付ませんでした。古くて大きなオリーブが街の周りを囲み、高台からはオリーブ農園が数多く見受けられました。ソモンターノのワインと同じく、やはりピレネーに背後を保護され独特のミクロ気候があるようです。

町も最も高いところに防衛のためにアラビア人が作った城が残っていますが、11世紀にキリスト教徒によるレコンキスタ成立後は、Colegiataコレヒアタと呼ばれる勉学が目的の教会になり、ゴシックスタイルのシンプルでエレガントなクロワスター回廊も存在します。春から秋にかけて、この回廊の中でポカポカ状態で建造物を見学することは至福の快感。何度訪問しても言葉にならない感動があります。

回廊の様子はこんな感じです。古いフレスコ画も良い状態で残っています。初回訪問した時は、とにかくこの回廊が見たくて真夏の日差しに耐えながら、この高台に登ったことを憶えていますが、当時はツーリスト用のパーキングもなく、ほとんど貸し切り状態で教会を見学した記憶があります。今とは比べ物にならない姿でした。
(この写真はヴェキペディアからお借りしました)

町中には、こんな風に中世からのアーケードも綺麗に保存されています。雨の日でも市場が出せるように、スペインの古い豊かな町には必ず広場がアーケード化されています。遠い昔からスペイン人は、こういう広場に座る時間を大切にしていたのですね。空気にその様子がしっかりと刻まれているように思います。

観光化が進んでしまったので今は週末になると町は機能し、平日はほとんど住人がいないような感じです。

町の構造はアラビア文化の影響が特に色濃く残っているようで、いろいろなところに近道のための通路や路地があり、典型的な迷路都市でした。興味深かったのはこの写真の通路。なんだか分かりますか?梯子が天井がある通路に保管してあるのです。この梯子は、実はオリーブを収穫する際に町の人が共同で使ったもの。今でもしっかり守られていました。

すごい長い梯子なので、私は怖くて登れないような印象を受けました。

この古い写真からも分かると思いますが、相当高いところに登ってますよね。
今はこんな背の高いオリーブは少なくなっていますが、昔はこんな感じだったのです。日本でスペインオリーブオイルとかオリーブと言えば、南部のアンダルシアを思い浮かべる人が大部分だと思いますが、こんなピレネー山脈に近い地域でも、オリーブは栽培されているのです。勿論、オリーブの品種は違いますが。

こんな風に少しでもスペースがあれば、路地や通路は梯子保管倉庫に変身。オリーブの産地をいろいろ巡りましたが、こういう梯子の保管の仕方は初めて見ました。グッドアイデアですね。気に入っちゃいました。

ところで皆さん、この通路説明がなければ多くの人がモロッコやどこかアラビア圏の写真だと誤解してもおかしくないと思いませんか。誰にモロッコと言っても疑わないと思うのですが…

今回のアルケサール訪問は、全く予期していなかったのですが、オリーブについての収穫もある有意義な旅となりました。

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