スペインにはサンティアゴ巡礼の終点の大聖堂、美しいブルゴス大聖堂、巨大な宝箱のようなセビリア大聖堂、メスキータを残すコルドバ大聖堂と数多くの重要な大聖堂があります。今日はその中でも際立てミステリアスなバレンシアのサンタ・マリア大聖堂についてお伝えしたいと思います。
ローマ時代から神殿があったと言われる場所に大聖堂があり、一見ゴシック建築ですが様々な様式が増築されています。写真が【使徒の扉】よ呼ばれる入り口で、ここではヨーロッパ最古の水法廷が今でも開催されています。バレンシアにある灌漑用水の使用紛争を避けるための法廷で、世界最古の民主主義による裁判所ともいわれています。この扉の前に代表者が椅子に座って今でも議論する姿は有名です。
美しいマリアが天井の音楽を奏でている天使と共に彫られています。この下で水法廷が開催されていることが神秘的に思えます。
この牡牛の紋章は、あの悪名高いボルジア家の紋章。バレンシア地方の名門家であったことがここでも伺えますが、ボルジアという発音でなくスペインではボルハ家と呼ばれています。バレンシアのあちこちの痕跡を残すファミリーで、いつか詳しくお伝えしたい一族です。この紋章がこの扉に彫られていることは、とても印象深い事実で、スペインでは本当に歴史を体感できます。
観光客はこの扉の重要度をほとんど知らないので直ぐにエントランスに向かってしまうので、私は静かにじっくり鑑賞できました。フランスゴシックの影響の強いスタイルで、あまりに精密に彫られているので名門の石工が彫ったことが明らかな優雅で繊細な彫刻群でした。
大聖堂の中に入るとまずは小さな古いチャペルへと導かれるのですが、そこにキリスト教史の中で最大の遺品のひとつ、最後の晩餐でキリストが使ったと言い伝えられている聖杯カリスが祀られています。
イスラエルからキリストの弟子がヨーロッパまで運んできたと伝えられていますが、何年か前に大ヒットした『ダヴィンチコード』を読むと詳しくこの聖杯の歴史は書かれています。1世紀の盃だそうで、ミステリー好きには必見のチャペルです。重厚なチャペルでひと際輝いていました。
今回の訪問の目的は、2004年に偶然発見された天井画を見ることでした。1474年ルネッサンスの真っ只中にPaolo de San Leocadioパオロ・デ・サンレオカディオという天才画家によって描かれた天使群で、コバルトブルーのあまりの美しさに圧倒される作品です。17世紀に塗りつぶされてしまっていたものが、修復工事で奇跡的に発見され完璧に修復され、当時の荘厳さが蘇っています。
祭壇画はFernando Yanes de Almedillaというスペインで唯一ダヴィンチと共に活動していた画家の作品。理想的なコンディションで残る傑作です。高いところの作品はよく見えなくて残念ですが、すごい迫力でバレンシアのゴシックからルネッサンス期の偉大さを伝えてくれます。ダヴィンチの影響もしっかりと感じられます。
最後に個人的にとても感動した作品をお伝えしたいと思います。
『キリストの洗礼』を描いたVicente Macipヴィセンテ・マシップの作品。この作品は描かれた当時から聖水盤の上に飾られており、オリジナルな場所で鑑賞できる貴重な作品。ヨルダン川でヨハネに洗礼を受けているキリスト像は、華やかな彩に囲まれこの上なくエレガントに描かれています。ナポリ経由でイタリアのルネッサンスがバレンシアではとても人気だったことが垣間見れる作品です。今すぐにでもまた観に行きたい作品です。
アラゴン王国の港としてバルセロナ同様に重要な港町バレンシア。知れば知るほど興味深い歴史があり、これから頻繁に訪れたい地域になりました。食文化も独特なものがあり、マスターしたいレシピが色々あり、最近バレンシアにはまっています。スペインを知るには欠かせない町のひとつです。
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