最近おしゃれなレースのようなカーネーションが増えていますね。色彩も豊富ですっかり好きな花のひとつになりましたが、以前はアンダルシアの伝統衣装とカーネーションがあまりに密接で、花として楽しんでいませんでした。
下の写真はModa Espanolaより。カーネーションがインスピレーションになっているフラメンカ衣装。
この花が好きになったもうひとつの理由を今日はお伝えします。フィリペ2世の父カルロス5世は神聖ローマ帝国の王でもあり、16世紀ヨーロッパで絶大な権力を持つ王でした。彼は政略結婚にも拘らず円満な夫婦関係をもっていたと伝えられており、セビリアで結婚式を挙げアルハンブラ宮殿でハネムーンを過ごした幸運な王でした。
カルロス5世。数多くの肖像画や彫刻が残っており、スペイン史で最も重要な王のひとりです。
写真はウィキペディアより
この美しい女性がポルトガル王マヌエルの王女イサベル。この肖像画はカルロス5世が彼女の死後依頼したもので、画家ティツィアーノは彫刻やほかの作品を基に描いた作品です。亡くなるまでずっと王はこの絵を身近においていたそうです。カルロス5世が亡くなった部屋は今でも喪中状態の黒いベルベットで覆われ、部屋の一角にこの絵が飾られていたそうです。
1526年彼らが新婚生活を送っていたアルハンブラ宮殿で、イサベルに贈ったそれまでスペインには存在しなかった花がこのカーネーションです。当時ペルシャ帝国の王から入手したと言われトルコ経由にスペインに届いたそうですが、この赤いカーネーションをイサベルはこよなく愛し、アルハンブラ宮殿の庭をカーネーションでいっぱいにしたそうです。
このリンダラハのパティオの周辺の部屋を構えて二人は滞在したと伝えられており、このパティオにもカーネーションを植えていたそうです。この作品はスペインの印象派ホアキン・ソローリャ作。このタッチがとても気に入っているのですが、現在カーネーションはなくちょっと寂しく感じます。
スペイン、そして特にアンダルシアと言えばカーネーションがシンボルのようになっていますが、こんな風にカルロス5世がわざわざ取り寄せた当時は非常に珍しく、あの深紅の色合いが彼の愛情そのものを表していたカーネーションが、最終的にはアンダルシアの象徴にまでなったのです。このストーリーを聞いてからカーネーションを見ると、どうしてもカルロス5世とイサベルの事を思い出し、カーネーションを買ってしまいます。
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