世界遺産の町セゴビアにある美しい封建時代の建物『Torreon de Lozoya ロソイヤの塔』で、絵画のプライベートコレクションの展会”Semblantes” センブランテスが開催されています。運よく私は家族ぐるみの長いお付き合いをしているのでオープニングセレモニーに参加して参りました。
セレモニーは12時から。マドリードから美術関係者や友人が塔の前に集まっていました。きっと色々な人と話をしなくてはいけないと想像していたので、私は塔に着くなりすぐに建物の写真を一枚。なんとこの一枚を撮る時間しかありませんでした。しばらくぶりに会った人たちに日本の地震や原発についての質問攻めにあい、その後は親しい人たちと世間話。話をしているのにキョロキョロできないので、周囲の様子はこれ以上撮れませんでした。
こんな風に塔内の数々のサロンにコレクションが飾られました。壁の色が独特の紺色ですが、思ったよりも絵に合っていました。他の美術館にあるピンクというかオレンジ系の壁色よりもいいと思います。ところどころに暖炉や典型的なスペインタイルが残っていて、この塔を修復保存した偉大なLozoya侯爵のスピリットが感じられるような建物でした。
写真の中心にある聖母マリアの作品は、17世紀スペインバロックの天才彫刻家Pedro de Menaペドロ・デ・メナの傑作。コレクションのマスターピースのひとつです。
オープニングセレモニーの様子。急な電話で会場を出てしまったのですが、逆にパティオで有名なコレクターにばったり会ってしまいおしゃべりに花が咲いてしまいました。記念写真まで撮らせていただけたので特別にアップします。左側の方がRudolf Gerstenmaierというドイツ人の偉大なコレクターなのですが、穴の開いたグリーンのポロシャツを着ていてあまりにもみすぼらしい服装だったので、あとで笑い話になったくらいです。
※この展覧会から数年後2021年にルドルフさんは亡くなり、コレクションの大部分がプラド美術館に寄贈されました。興味のある方はスペイン語ですが新聞記事をリンクしておきますのでご覧ください。
あるコレクターの老夫婦は、息子たちが全く美術品に興味を示さないことを嘆いていました。孫たちも関心を示さないそうで、現代人たちはどうしてしまったのかと吐息をついていました。確かにスペインでアートコレクター、特に古美術収集家の間では若者の姿はほとんど見られません。モダンアートには若者が集まるのですが…ルドルフさんは最近のスペインモダンアートのクオリティの低さを批判し、レイナ・ソフィア美術館の購入作品質の悪さを嘆いていました。私も全く同感です。
展示作品の中でも逸品のひとつ、ロレンツォ・ディ・クレディ Lorenzo di Crediのマドンナ。1500年から1510年ころの作品だと言われています。
いつもこの作品をグラナドス宅で観ていたので、ここで観るのは違和感がありました。美術品は生活に密着している方が温かく感じられるのですが気のせいでしょうか。どうしても”展示”となると家具も何もない空間に絵が掛けられ、美しい壁や布、暮らしに必要な諸々のモノが足りないように思ってしまいます。
こういうセレモニーに参加すると嬉しいのは、普通は入れないサロンに入れること。こちらのサロンにもグラナドス・コレクションが展示されてワインを飲みながら鑑賞する贅沢なパーティーでした。
グラナドス家のお嫁さんと一枚。彼女は修復専門でいつも何か絵画や家具などを手入れしています。ファミリーにピッタリのお嫁さんです。
私も嫁ぎ先がスペイン美術のコレクションをしているファミリーだったので、何年もかけてスペイン美術の偉大さを伝授され、夢のような美術品を今でも収集している人達に直接話を聞く機会を持つことができ、本当に恵まれていると思っています。学んだ事は次世代に伝達しなくてはいけない義務感も感じています。
ルネッサンスの美しいテラスのあるパティオ。
セゴビアには、こういう外見からは想像できない素敵な建物がたくさんあります。スペインの歴史ある町のお屋敷は、中に入るとエレガントなパティオがあり嘘のようで静かです。表は観光客が溢れているとは全く思えません。
今日も思い出に残る良い会に参加させていただきました。
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